ガイガーカウンタの製作
福島原発事故の影響でガイガーカウンタを作るのが流行っているようなので、せっかくの機会なので作ってみました。
ガイガーカウンタとは
ガイガーミュラー計数管というガス管に放射線が突入した時、ガスがイオン化する現象を利用して放射線の存在を検出する装置です。
高電圧をかけた電極間のガスをイオン化させると、イオンと電子がそれぞれ電極に引かれ加速し、その運動エネルギーにより途中で衝突したガス分子も次々イオン化させる事で電子雪崩が発生し電極間にパルス電流が流れます。
安価な窓なしGM管では金属管(ステンレス等)を突き抜けられる放射線しか検出できないため、電磁放射線(電磁波)であるX線とγ線しか検出できません。但し、β線も管に衝突した時に制動放射という現象によりX線が発生するため検出する事ができるようです。
と覚えたばっかのヌルい知識で果たして合ってるのだろうか。
外から見ていると、高電圧をかけたガス管に不定期にパルス状の電流が流れる現象として観測できるので、難しい事抜きにしてこの動作さえ検出できれば放射線の衝突を観測する事ができます。
今回使ったものは ネオン+臭素+アルゴン の混合ガスが使われているようですが、空気(窒素)+アルコールやブタンガスで自作る方法もあります。
今回はしばらくの間安定して使いたかったので既製品のGM管をロシアから輸入しました。国産は数年前まで浜松ホトニクスが製造していたようなのですが既にディスコンしていました。
回路
ガイガーカウンタは主に3つの回路から構成されます。
高圧電源 (感電注意!)
今回使用するSBM-20はデータシートによると400Vが推奨駆動電圧となっていました。
昔なら使い捨てカメラのストロボ基板を使ったかもしれませんが、今や使い捨てカメラなんてほとんど見かける事もなくなってしまったので、コイルを巻いて自力で組んでみました。
と言っても本当に最初から巻くと大変なので、既製品のインダクタを改造して作ります。千石電商の地下で売っていたドラムコアのインダクタ(mH)の外側に更にコイル(ポリウレタン線)を2本、10回巻きつけてブロッキング発振回路を作ると、ブロッキング発振回路のコイルとインダクタのコイルがトランスとして機能し、インダクタに大量に巻かれたコイルに高電圧を発生させる事ができました。
あるいは、小型の冷陰極管用インバータモジュールを利用した方が簡単確実です。秋月で売られている小型冷陰極管インバータの入力電圧を下げたら出力も安定して下げる事ができたので、入力を2.7Vくらいまで下げたら出力400Vp-pにする事ができました。このモジュールも見た感じトランスをブロッキング発振回路で駆動しているだけのようです。
製作する上で一番厄介なのがこの高圧電源です。高耐圧なコンデンサやトランス等、特殊な部品がいくつか出てくるので手間がかかりますが、ここさえうまく動かす事ができれば後は特に難しい回路はありません。
パルス検出,波形整形
GM管から出力されたパルスを扱いやすいようにロジックレベルに変換したり、ブザーやLEDを駆動するためにパルス幅を引き伸ばす回路です。
出力されたパルスは振幅が数百Vあったり、高圧電源のリップルノイズが乗っていたりするのでそのままでは扱いが面倒なため、74HC14で波形整形しました。入力には保護ダイオードがあるので定格電流を超えないように注意して高電圧パルスを受ける事ができました。
計数,表示,通信
マイコンでパルスをカウントし、1分あたりのパルス数=CPMを表示します。
データの更新が1分毎では退屈なので、10秒毎にカウントした値を6個加算して表示するようにし、10秒毎に過去1分間のカウント数が確認できるようにしました。
液晶の文字数が余るので、温度計みたいにリセットボタンを押してからの最大最小値も表示するようにしました。
UARTなどでPCと通信できるようにすれば放射線量をネット中継する事もできます。
回路図
製作
マイコン以外の部分は回路図の通りに配線すれば動きます。
唯一、トランスが入手できなかったため千石電商の地下で売っていたドラムコア型インダクタを使って自作しました。
参考までにトランスの巻き方を示します。
インダクタに最初から巻いてあるコイルの巻き数がわからないので実験したところ、100mHのインダクタに10回巻きで約400Vになりました。
但し、どうしても個体差が出てしまう可能性があるうえ、高電圧で測定も難しいので既製品の小型冷陰極管インバータを流用する手を2枚目の回路図に示しました。
これなら図の通りに配線して入力電圧が2~3Vに調整すれば動作させる事ができます。高電圧を測定する術を持ってる人は整流後の電圧が400Vになるように調整してください。
許容範囲は広いのですが、極端に高いと勝手に放電してしまい正常に放射線が検出できなくなります。また、電圧が低すぎると放電しなくなり放射線が検出できなくなります。
もし動作がおかしいようならこの部分から疑うといいかもしれません。
表示部はAVRマイコンを使っているのでファームウェアの書き込みが必要になります。
まだバグありなので修正したら公開しようかと思ってます。
バグありでもいいから早くよこせって人がいたら出しますけど。
計測結果(参考、正確な値は公的機関のデータを参照してください。)
2011/05/02 自宅庭(笛吹市)
立って手に持った状態 10〜30cpm
地面に置いた状態 20〜30cpm
2011/05/01 秋葉原(秋月電子前) 福島原発から220Km
手に持った状態では平常時とほぼ同じ値(20~30cpm)だったのですが、舗装に置くと70cpm程度まで上がりました。
再び持ち上げると値が戻るので、おそらく地面に放射性物質が極微量存在するようです。
ちなみに、いつものメイドさんのところでは通常レベルでした。室内ならほとんど無関係の様子。
マントル(キャンプ用ガスランプの芯。メーカーによって差があるらしいです)
詳細不明の物で1000cpm以上
どのメーカーがよく出るのかは不明。コールマンはハズレとの噂。
とある会社の非破壊検査(レントゲン)装置
停止時 特に目立った増加なし。
出力時 計測不能。
ユニバーサル基板にD-Subコネクタを実装する方法 |
電子工作 |
ガーバーファイル名変換スクリプト |